東京大空襲訴訟に対する法務省訟務局の答弁書を日本国憲法に基づいて検討してきた。纏めると、 「訴状」に対する「答弁書」(1)の “▶ 目次の 第4-2 を検討します” において ▼2立法不作為の違法をいう原告らの主張が誤りであること 国会の立法l不作為についての訟務局の、戦争損害は憲法の枠外(憲法に書いてない)とする見解は、憲法第13条と第17条の存在を無視する故に、違反している。 国会が憲法の趣旨に違反した法律をつくってしまった場合を例外的と書いている、問題の焦点をずらしているようだ。本件は、国会が、一義的条文が無くても、国民の一部被害者たちの福祉のために必要と視るならば、憲法第13条の後半の趣旨を積極的に解釈し、新しい法律をつくらなくてはいけなかった。 しかし、長期にわたってそれをしてこなかった国と国会は、憲法17条を通して、国家賠償法の適用を受け入れなければならない。 上記のように、原告には憲法上の理由があるが、答弁書は、憲法解釈を逃げている。――― 最高裁判所平成17年9月14日大法廷判決(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件)という、本件空襲被害訴訟に全く関係のない判例を持ち出し、苦しい予防を行っている。 また、「国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会が敢えて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものといわなければならない。」 と、国会が憲法の趣旨に違反した法律をつくってしまった場合を例外的と書いている。が、問題の焦点をずらしているようだ。国民の戦争被害を無視するために、見苦しい口実を述べている。 ―――――――――――――――――――――― 「訴状」に対する「答弁書」(2) 〝▸目次の第4-3を検討します” において ▼3 行政不作為の違法をいう原告らの主張が誤りであること 戦争被疑者は、実際に参議院において救済立法案をしていたし、名古屋空襲の裁判も賠償請求をしている。にもかかわらず、行政立法による救済立法らしき措置をせず、 80年12月にまとめた「原爆被爆者対策基本問題懇談会答申書」とか、1984(昭和59)年1月21日、平和祈念事業特別基金を創設するための総理府総務長官の諮問機関による、「戦後処置問題懇談会」において、政府の方針に合わせ、故意に民間戦争被害者の存在を無視してきたのは明らかである。 ――――――――――――――――――――― 「訴状」に対する「答弁書」(3) “▸目次の 第4-4 を検討します”において、 ▼ 4 原告らの損害は戦争損害であり、憲法の枠外の損害であって違憲違法と評価される余地はないこと 「戦争被害ないし戦争損害として、国民等しく受忍しなければならなかったものである。」 とは?! 憲法が保障する国民の基本的人権を、無視、あるいは軽視する旧官僚的思惑は、あまりにも言語道断に過ぎて意味不明である。 深く真面に反論する意味はない。要するに、裁判所に本件訴訟を棄却するように指示している答弁書である。 ―――――――――――――――――――――
憲法に照らし、空襲被害者の請求には理由がある。 訟務局は、「答弁書」の冒頭で、裁判所に対し下記のような判決を促してもよかったのである。
つづく |